職能型成果給制度のご提案
年功制を存続させながらの成果配分人事制度
最近の賃金をめぐる動向
生涯賃金からその都度賃金へ
従来の職能資格制度による年功型賃金制度は、個人の能力や会社業績にはあまり関係なく、社員の生活の拡大に合わせた賃金制度でした。しかし、社員構成の中で若年層が少なくなり、会社業績も右肩上りで伸びなくなった現在、この制度を維持することはできなくなっています。
そこで考え出されたのがその都度賃金です。その都度賃金とは、毎年の成績によって賃金を洗い替えしようという賃金制度です。基本的に定期昇給の考え方はなく、賃金が下がることもあり得る制度です。
人につける賃金から仕事につける賃金へ
従来の賃金制度では、生活保障の面にウエイトが置かれていたため、賃金の中に能力、業績とは関係のない賃金がかなりあります。勤続給、年齢給、家族手当、住宅手当、食事手当などが該当します。これらにより年功的な賃金になっていました。
中小企業においては、年功的な面をまったく否定してしまうと組織的に成り立たなくなる面もあります。年功制の良さも残しながら能力、業績、成果を加味した賃金制度を導入することで、前向きにがんばれる組織体制を構築することが求められています。
ヤル気の起きる賃金制度のポイント
1.給与水準が適正であること
給与水準が高ければ、ヤル気が起きるというわけではありません。同業、同規模、同地域と比較してほどほどであれば、適正水準と考えてよいと思われます。
2.給与の決定基準が明確であること
何を基準にして給与を決めているかを社員に明確にすることが大切です。決定基準は勤続、年齢ではなく、能力、仕事の内容、仕事の成果で決める会社が多くなっています。
3.意味のある格差をつけること
年齢、勤続が同じ場合に、同じ給与であれば平等かというとそうではありません。能力、仕事の内容、仕事の成果によって格差がつくほうが平等だと思います。評価によって認められることでさらにヤル気が起こります。
4.給与の改定のルールが明確であること
どうすれば給与が上がるのか、下がるのかを明確にすることが大切です。それには評価するルールづくりが不可欠です。
5.ルール化され公開されていること
賃金制度は公開しておくことが原則です。ルールがわからなければ社員の納得感を得ることはできません。
これからの賃金制度を検討するうえでの留意点
現在、毎年業績が右肩上がりで拡大していくわけではありません。より能力、仕事の内容、仕事の成果を中心に給与を決定していく必要があります。このようなことを考慮して、次のようなことに留意することをお勧めします。
1.毎年確実に上がる給与(定期昇給)をなるべく少なくする仕組みを考えること
2.年齢、勤続で上がる給与を少なくするか、廃止することを考えること
3.人につける給与を少なくして、仕事につける給与を多くすることで成績が反映される給与にすること
4.仕組みはなるべくシンプルで、公開できるものにすること
5.基本給が大きく昇給する仕組みは避け、利益が出たら賞与でその都度配分する仕組みにすること
6.能力、仕事の成果が公正に評価できる人事考課を行う制度をつくること
職能型成果給制度の導入手順
ステップ1 職能型成果給の枠組みを決める
ステップ2 グレード(等級)ごとの能力基準書を作成する
ステップ3 グレード給、成果給のテーブルを作成する
ステップ4 初任給格付、昇格・降格のルールを決める
ステップ5 人事考課表を作成する
ステップ6 賞与の配分ルールを決める
ステップ7 退職金制度を決める
ステップ8 給与規程、賃金制度運用規程を作成する
ステップ9 社員説明会資料を作成する