大阪の社会保険労務士、村田社会保険労務士事務所による労務管理情報

「パワー・ハラスメント」の基準は?

法的定義のないパワハラ

職権を使ったいじめや嫌がらせである「パワー・ハラスメント」(パワハラ)が、会社の業務に大きな影響を与えるようになってきました。社員の士気や会社の評判を落とさないように対策に乗り出している企業もありますが、「セクシュアル・ハラスメント」(セクハラ)と違って法的定義がなく、あいまいな基準が対応を難しくしています。

 

パワハラに関する裁判例

企業内で上司などから暴力や暴言、無視されるなどのパワハラ行為を受けて悩む社員は多く、年々増加傾向にあると言われています。2007年10月の医薬品販売会社社員の自殺について、東京地裁がパワハラとの因果関係を認めて労災と認める判決を出しました。
また、2008年7月には道路会社社員の自殺をめぐり、被害者がうつ病で自殺したのはパワハラが原因であるとして、遺族が慰謝料などの損害賠償を求めた訴訟の判決で、松山地裁は自殺との因果関係を認め、約3,100万円の賠償を命じました。裁判長は、上司による過剰なノルマ達成の強要や度重なる叱責は「違法と評価せざるを得ない」と指摘し、「自殺は予見可能だった」として会社の責任を認めています。
また、企業のトップがパワハラ体質であるために社員が相次ぎ辞めていく会社もあると言われており、パワハラに対する社会の見方は厳しさを増していると言えるでしょう。

 

「パワハラ上司」のタイプ

パワハラに関し、研修の主要テーマに据えるなど、何らかの予防策を模索する企業は増えています。パワハラに関する研究を行っている有識者によると、主に「パワハラ上司」は、以下の4つのタイプに分けられるとしています。
(1)怒鳴るなどの威嚇をする「自己中心型」
(2)細かく指示する「過干渉型」
(3)自分の上司頼みで責任を回避する「無責任型」
(4)意欲に乏しく部下に負担をかける「事なかれ主義型」

 

世代間で認識にギャップも

パワハラについては、世代間の認識の差なども大きく、特に年長社員には先輩社員に怒鳴られながら仕事を覚えた経験を持つ人も多く、「部下に熱心に注文をつけて何が悪いのか」といった反応もあるようです。
暴力を振るう、到底達成できないノルマを課すなどの行為は典型的なパワハラですが、一方で、部下の成長を願って強く注意するといった行為がパワハラなのか、基準は受け止める側によってまったく変わってきます。ただ、パワハラ対策に真剣に取り組むことにより、必然的に、上司と部下の関係や、職場の雰囲気などが改善されていく可能性は大いにあると言えるでしょう。