大阪の社会保険労務士、村田社会保険労務士事務所による労務管理情報

育児休業取得者の不利益取扱いをめぐるトラブル

労使トラブルへの発展

世界的な金融危機の影響等により雇用情勢が急速に悪化する中で、育児休業取得や妊娠・出産を理由とした企業側からの解雇や雇止めなど、不利益な扱いを受けた労働者からの相談が急増し、労使トラブルにまで発展しているケースもあるようです。

 

不利益な取扱いをめぐる労働相談

育児休業取得をめぐる不利益な扱いに関する労働者からの相談は、ここ5年で増加傾向にあります。都道府県の労働局に寄せられた相談件数は、昨年4月から今年2月末までの間に1,100件を上回り、前年度の約1.4倍となっていることが厚生労働省のまとめでわかりました。また、同様に、妊娠・出産等を理由とした不利益取扱いに関する相談も増加しています。
金融危機が起きた昨年度後半からこのような相談は急激に増加し、現行の調査方法となった2002年度以降で最悪の水準となっています。
寄せられた相談内容は、育児休業後に復職を希望しても「業績悪化で以前の勤務時間に仕事がない」「他の人を雇ってしまった」などと拒まれたケース、勤務条件の変更を求められたり退職を勧奨されたりするケースなどが目立っています。

 

厚生労働省の対応

こうした状況を踏まえ、厚生労働省は、産前産後休業および育児休業等の申出・取得、妊娠・出産を理由とする解雇その他不利益な取扱いについて、各都道府県労働局長に対し、労働者からの相談への丁寧な対応、法違反の疑いのある事案についての迅速かつ厳正な対応、法違反を未然に防止するための周知徹底等に関する通達を出しました。
そして、事業主に対しての周知も徹底し、事業主向けリーフレットを新たに作成しました。

 

法違反の周知徹底を

経営環境が悪化して業績不振であることが理由であっても、労働者が産前産後休業または育児休業等の申出・取得をしたこと、妊娠または出産したこと等を理由として、解雇その他の不利益な取扱いをすることは、男女雇用機会均等法および育児・介護休業法で禁止されています。
また、労働基準法、男女雇用機会均等法により産前産後の期間およびその後30日間に解雇することも禁止されています。また、妊娠中・産後1年以内の解雇は「妊娠・出産、産前産後休業取得等による解雇でないこと」を事業主が証明しない限り無効となります。
育児休業の取得を推進し、ワークバランスを提唱している反面、不況のあおりが育児休業者など立場の弱い人々に向かっている現状において、国が取り組むべき課題が潜んでいるように思われます。